Angling Net / The Grotesque Night

Grotesque Fishing Report
雨が降ったら琵琶湖大鯰

18時30分‥‥‥トップにもミノーにも反応がないのでバイブレーションプラグに換えた途端にきた中学生級。メーター級かと思うほどひとのし目は強烈だったが、後はよたよたとしたファイト。いや、釣れたのに文句を言ったらバチがあたる。

20時00分‥‥‥大物をバラして河原の石を叩いて悔しがるオカセイネンの姿が、私には愉快であった。バラしたことではなく、その悔しがりようが愉快だった。
私も同じ経験を幾度となくした。悔し紛れに竿で水面を叩いて折ったこともある。彼の胸の痛みは手に取るように分かる。しかし、みんなそうやって名人、達人になるのだ。

オカセイネン‥‥‥キャリア1年でメーターオーバーを釣り上げた男である。おそらくこの1年は、彼にとって目まぐるしく進化した1年であったに違いない。
しかし、そんな強者にも失敗はある。それを素直に悔しがる姿が微笑ましかったのだ。あるいは男の可愛らしさが見え隠れして、つい嬉しくなったのだ。
いいじゃないか。大物を仕留めて自慢している君よりも、河原にはいつくばって石を叩いて悔しがっている君の方が私は好きだ。

20時30分‥‥‥クボタの竿が曲がる。雨が一段と激しさを増して、もうぼちぼち仕舞おうかという時、闇の中から『きました!』というクボタマンキチの声が響いた。

クボタはこの日が琵琶湖大鯰初挑戦である。釣りの世界には昔から「ビギナーズラック」という言葉があって、初心者の無欲が好釣果を生むというのだ。なるほど、そういうことがあるかもしれない。しかしそれはちょっと違う。

「釣るやつは釣る、釣れんやつは釣れん」‥‥‥水橋かちひろがよくこんなことを言っていた。まさにその通り。初心者であろうとベテランであろうと、竿を持って魚と対峙するかぎり同じ土俵にいるのである。したがって、釣るやつは釣るべくして釣るのである。

ごく最近この男と知り合って、何度か一緒に釣りをしたが、タダモノならぬ雰囲気を持っている。それが何かは分からないが、おそらく「魚を釣りたい」という素直な気持ちではないかという気がしている。釣りはハートだ。
クボタマンキチは私より遙かに若い。もし釣りをしていなかったら、こうやって一緒に遊ぶことなどないだろう。こういう男と釣りをするのはとても楽しい。

20 June 2001
Ikasas Ikuy


back