Angling Net / The Grotesque Night

2004 last namazu

とっぷりと日が暮れて川は晩秋の色に染まる

■昼
昼間の鯰は大人しい
川底に身を潜めるようにして
静かに
半ば眠っている
目を覚ますと
小さな目でキョロキョロと
辺りの様子を伺って
また眠りにつく

■夜
日が暮れると
鯰は豹変する
獰猛で凶暴な
川のギャングになる
長いヒゲをふりかざし
大きな口をひろげ
小魚、エビ、カニ、水生昆虫‥‥‥
手当たりしだいに貪り食う
大きな腹が
はち切れるまで食う
そして
夜が明けるまで
暴れ回る


■11月23日
今期最後の鯰釣りに行く。同行者はヱンドレス森下。道中は、いつものヱンドレス節が炸裂する。本日のハイライト‥‥‥
「あいたた、家にロウガンわすれてきた」
「え?」
「あかんわ、ロウガンないから見えへんわ」
「それ、老眼鏡のことゆうてんのん?」
「そやで」

しばらく雨らしい雨が降っていないので、川は平常の水位を保っている。手を浸けると切れるように冷たい。川辺の景色も、秋から冬へと変わりつつある。今年のラストナマズ、果たして釣れるのか‥‥‥。
Ching Dong Stick→Ching Dong Bug→Ching Dong Bug Juniorとローテンションしながら投げていく。しかし、何の反応もない。ここぞというポイントでもまったく反応がない。鯰は深場に沈んでしまったか‥‥‥。

釣り始めて約2時間。出そうにない雰囲気‥‥‥だめだ。ボクは九分九厘あきらめていた。上流を釣っていたヱンさんが戻ってくる。「このしもになぁ、流れの水の湾が細ぅなってるとこがあんねん」と、わけのわからないことを言いながら、ボクの後ろを通り過ぎる。ボクは「もう帰らへんかぁ」と言いかけてやめた。相手はエンドレスだ。そう簡単にあきらめるわけがない。ボクも覚悟を決めて釣り続けることにする。

しばらくして、30メートルほど下流を釣っていたヱンさんが叫ぶ。
「でたぁ」
「あぁ」
「ばれたぁ」
‥‥‥声の調子からしてウソではないようだ。
様子を見に行くと
「うわっ」
「またでたぁ」
‥‥‥。

でっぷりと太った二尺鯰(Joint Jitter Bug 5/8oz)

出たのは2発とも流心脇のゆるんだところだと言う。小さな落ち込みがあって、速い流れの筋から外れたカガミのポイント‥‥‥なるほど、なるほど。

ボクは月明かりをたよりに下流へ走った
どんどんどんどん下流へ走った
同じようなポイントは300メートルほど下流にあった
チンドンバグをダウンクロスに投げる
流心から抜け出たチンドンバグは
「ちんどんちんどんちんどんちんどん」
派手なちんどんサウンドを立てる
大きな岩の横を
「ちんどんちんどんちんどんちんどん」
と、通り過ぎる‥‥‥
と、突然
「ガッポン!」
「でたぁ」
「よっしゃぁ」
「のったぁ」
「あかん」
「ドラッグだすだすやぁ」
「わははぁ」

派手な出方の割には小振りなナマズだった。しかし、このさい大きさはどうでもよい。ワンバイト、ワンナマズ。文句なしだ。完ぺきだ。円は閉じられた。

もし
かしこい人と釣りに来ていたら
この日
ボクはナマズを手にすることはなかったと思う
とっとと釣りを止めて
家路についていたにちがいない
ああ
アホなひとと来て良かった‥‥‥


「ヱンさん、あんたほんまにアホなひとでんなぁ」
「はははぁ、アホでっしぇぃ」


23/nonember/2004


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