Angling Net / The Grotesque Night
らいぎょふぃっしんぐいんたいらんど
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タイでルアー釣りが盛んになったのはここ数年のようですが、メーンターゲットとなっているプラー・チャドー狙いなら、ここカオレムダムがもっとも有名。
全長40キロ以上ある大型リザーバーで、拠点となる村、サンクラブリーはダム上流部に位置し、ミャンマー国境まで20キロの静かな村です。
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ミャンマーまで歩いていけそうなところにポイントはある
バンコクから西北の方向に車を飛ばして5時間くらいかかるのですが、それでもベストシーズンの4、5月頃になると、数十人のタイ人ルアーマンが船を浮かべるといいます。
見た目は日本の雷魚とさほど変わらないチャドーですが、その釣り方は、日本人の思い描く雷魚釣りとはかなり趣が異なります。言うなればサイト・フィッシング、と言っても目を凝らして探すのは魚自身の姿ではなく、チャドーの生態を利用した2つの目印です。1つは、日本でもおなじみの呼吸の泡、もう1つはチャドーの稚魚の群れです。
この魚には少し変わった性質があり、卵から孵って25センチ近くに育つまで、密集した群れを形成して成長します。生まれたばかりのチャドーは全身鮮やかな紅色で、時には直径1メートルを超えるほどの大きな赤い塊となって水面をさざめかしますが、生後二ヶ月位までは、周辺で母魚が子を外敵に目を光らせている。稚魚の群れをルアーでかき回し、怒った親魚を釣りあげようというのがタイスタイル。
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静かな水面に漂うフィッシングボート。ロケーションは素晴らしい。
現地ガイドと話をするとキャッチ&リリースはかなり意識されているようですが、やはり気持ちのいい釣りではないし、それにガイドが目印を見つけ出すまでただ待ち、OKが出ればその方向に一斉にスイッシャーを投げて高速リトリーブで水面を引き倒すという釣りです。そんなパックツアーのような釣りに我慢できず、今回、カオレムを案内してもらった武ちゃんは、前回訪れた際に現地で雑貨商を営むおっちゃんに交渉して船を出してもらいました。ただ今、日本人向けチャドーガイドとしてトレーニング中で、今回もそのスッチャイさんにお世話になりました。
湖は典型的なリザーバーで、特に雨期明けのこの時期は大きく増水し、水没した立ち木群やパラ葦といった風景は、ここは日本かと錯覚するほど。ときおり現れる水辺の高床式の住居や、夕日を受けて黄金に輝く寺院にかろうじてタイを見るのですが、ルアーを投げるのにさして違和感はありません。
日本のリザーバーに似ているが、そびえ立つ黄金の寺院はやはりタイ。
チャーターした長さ4メートルほどの小船は、2人が立って投げるにはちょうど良い大きさ。
岸沿いを流しながら、ここはというポイントでエンジンを切り、オールでこいでもらい
つつ、ブッシュや障害物回りをうっていきました。
最初にチャドーが出たのは、釣り始めてから1時間ほど経った時、武ちゃんのバズベイドに。静かな水面が突然、炸裂し、ロッドが一瞬、限界までしなったあと、ふっと緊張が抜けた。大物だったことは間違いなく、ラインを回収してみると、閉じたままのスナップが先に付いていた。彼が改良に改良を加え、十数匹のチャドーを仕留めて来た最愛のバズベイトは、アームが疲労骨折を起こしたみたいです。
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タイの雷魚釣りに精通している武ちゃんにファーストヒット。
かなりの大物だったが‥‥‥ばらし
日暮れ前、私に初めての当たり。興奮気味に大きく合わせをくれると、初めての一匹はそのまま一気に船内まで飛び込んできました。25センチ。まだ尾鰭に紅が残り、魚体も緑かかっている。チャドーと呼ぶにはちょっと恥ずかしい。やはりバズベイトでした。
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初めて釣ったプラー・チャドー。
チャドーと呼ぶにはちょっと恥ずかしい。
やはり白のバズベイト1/2ozで。
今回の釣行で最大の66センチは、小雨で気温が落ち込んだ朝に来ました。ここ4年ほど日本で60センチオーバーの雷魚を釣っていないので正確な比較はできませんが、その発達した下半身を見ても分かるように、泳ぎ出しが抜群に早く、方向転換が機敏な印象。しかもトルクフルで、青物のようにドラグを出してゆく。
どこかユルイ水面をイメージさせる日本の雷魚と違い、過剰にも攻撃的なルアーへの出方といい、チャドーには野生を感じます。もうひとつ、この魚が多くの釣り人を魅了するのは、釣り上げた者だけが見ることのできる魚体の美しさではないでしょうか。
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小雨の降る中で出た今回の最大魚=66cm。
幅1メートル、長さ4メートルほどのスッチャイの船は、2人が立って投げるにはちょうど良い大きさ。
この時期、チャドーは完全なシーズンオフのようで、私たち以外には、地元の子供が1人いただけで、他に釣り人はいませんでした。数もさほどあがらず、最大も66センチ止まり。
滞在先のゲストハウスのおばちゃんの話では、昨年5月に泊り客のタイ人が1メートル10センチ、13キロをルアーで釣り上げたといい、それに比べるとまだ子供の部類でしょう。シーズンインは1月頃。その頃にまた挑戦です。
(現地情報)
バンコクからカンチャナブリまでエアコンバスで2時間、79バーツ(240円)。
そこから高速ヴァンでサンクラブリーまでは3時間、118バーツ(360円)。
バスターミナルから湖畔のゲストハウスまで1キロほどですが、バイクタクシーを利用すれば10バーツ(30円)です。
ゲストハウスはシャワー付きで、1泊120バーツ(360円)から180バーツ(540円)。
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ゲストハウス外観
湖畔に建つアジアンな高床式住居
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ゲストハウス内
シャワー&ベッド‥‥‥快適
船のチャーターが、1時間150バーツ(450円)。2人で朝夕3時間ずつチャーターして、1人頭1日450バーツ(1350円)。
ただ、今後のこともあるので、ナイスサイズが釣れたときには50バーツ(150円)のボーナスを払いました。
先に話したタイ式チャドー釣りなら、英語を少し話せるガイドもいます。彼らも1時間150バーツですが、ただガイドは半日か1日コースしかなく、その場合は最低単位が6時間900バーツ(半日)になります。ただ自分で船をチャーターしようと思えば、どうしてもタイ語です。
食事は屋台でならビールを飲んでも1人250円前後で済みます。
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とりあえず1匹、ゲストハウスで揚げてもらう。
腹回りを除けば身はぱさぱさ。しっとりと柔らかいプラー・チョンの身とはまったくの別物。
チャドー用ルアーとしてタイの釣具店に並ぶのは、ほとんどがスィッシャータイプ。実績のあるハンドメイドものは280バーツ(840円)から350バーツ(1050円)と、タイの物価を考えるととてつもないぜいたく品ですが、お世辞にもきれいな仕上がりとはいえません。
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タイの釣具店に並ぶチャドー用ルアー
左上から2番目は「sasimi」という名前のルアー
今回、ノイジー、ポッパーといろいろと使ってみましたが、結局、魚が出たのは全てスィッシャータイプという結果に終わりました。
タイ人がスィッシャータイプしか知らないというわけではなく、やはりチャドーが異常なペラ好きなのは間違いなさそうです。一番反応が良かったのは、メガバスのPOP-MAXにタイで購入したペラを付けた改造ルアーでした。
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MegaBass "Pop Max" にバズペラを付けたルアーに出たプラー・チャドー。
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Written by Takasago Toshiaki
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