Angling Net / The Grotesque Night



異国の人々の暮らしぶりに触れてふと我に返ること

若い夫婦だった
テナガエビを捕っていた
男が船首で仕掛けの篭をたぐり
女が船を安定させようと華奢な手で櫂を操っていた
船底には大きなエビが三匹入っていた
青くて長いツメの大きなエビだった
これが彼らの生活のすべてなのだろうか‥‥‥
この三匹で彼らは今日一日暮らせるのだろうか‥‥‥

夫婦はいずれも二十代半ばだろう
若々しい匂いが漂っていた
ふと
彼らと同じ年の頃を思い起こしてみた
しかし
何も思い出せなかった
記憶が欠落していた
いや
欠落していたのではなく
あまりにもかけ離れていたために
目の前の風景と重ならなかったのだ


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