Angling Net / The Grotesque Night 魚を漁る ![]() Extract it more than "BUMS COLUMS". Written by Naritoshi Oka 宇治川の夜‥‥‥ 2人の人間が浅場でじゃぶじゃぶ音立てて嬌声を上げている。 なにごとかと近寄ると打ち網でアユを捕っておられる。 てっきりアユの密漁かと思いつつ声をお掛けしてみると漁業組合の役員さんだった。 後ほどお聞きしてビックリしたが、二人とも六十を過ぎた「じいさん」だった。 「うーりゃぁあぁぁ!!」 ザバーン! 1人が網を打つと同時に、もう1人が網を目がけて飛び込んで網に掛かったアユを押さえる。 『どや!はいっとるかぁ!』 『ををを!はいっとるはいっとる、はいっとるわ!』 『おーっしゃああ、はよ押さえぃ!』 『うわぁっ!ちゃうわこれぇ、ニゴイやぁ!』 『なーんやあかんやんけおっさーん』 『おっしゃ、次いこ。・・ををあそこ完璧や!あそこあそこ!』 『を? をーっ、最高のとこや!こういうトコにおんにゃ』 ザッパーン! 『おっしゃぁぁ!ええかんじに網広がったやんけおい!』 『おおーっ、このみち35年じゃあ! はいっとるかぁ?!』 『・・・はいってへーんわ!』 『おっしゃ次いこ。を?あっちカンペキやんけぇ!』 『ほんまや!こういうとこにおんにゃぁ!サイッコウや!』 『おっしゃいくでーっ!』 ザバーン! 『はいったかぁ!』 『はいっとる、はいっとる、はいっとるわ!』 『ほんまけ!おいニーサン、網もっといてくれ!わしも潜るわ!』 『は、はい・・』 『おーっしゃぁ!!捕ったで捕ったで捕ったでぇぇぇ!』 『をーっ!めっちゃスイカのニオイや!』 『をーっ!ニーサンもにおいでみ!』 『クンクン・・ほんまや・・スイカや・・(とりあえずこのおっさんらは、35年もの間この調子か?)』 『わしらはなぁ、子供時分から潜ってアユ捕って、パンツに一杯入れて口にも2、3匹くわえてたもんやぁ。ちんこがこそばーてなぁ、ひゃーひゃひゃひゃ!!』 (もう1人のおっさんは、プカーと川に浮かんで遊んでいる) オイカワがいっぱい網にひっかかった。 おじさん達は、引っかかったオイカワを岸にぽいぽい投げて 『明日の鳥の朝飯や。よかったらニーサン、持って帰って炊いて食うてみ。うまいでー』 と言う。 ギギが引っかかった。 おじさん達は 『こいつぁ危ないんやぁ』 と言いつつ 『痛っ』 と手から血を出し、棘をボキボキ折ってからそばに落ちている石でガシガシ頭を殴りつけて殺し 『こうしとかんと、他のおっさんが踏んだらドえらいんやぁ』 と言う。 ブラックバスが引っかかったら 『なーにが「りりーす」じゃあ。引きずり倒して怪我さしといて、どのみち弱って死んでまうのに、持って帰るかその場で殺すかどっちかしたらなアカンど』 と言う。 不思議な感覚だった。 残酷などという感覚はなかった。 むしろ、溢れんばかりの愛情を感じた。 理屈抜きの、古来からの人と魚の関わり合いの1コマを見た気がする。 目的は、アユを捕って持って帰って食うことであり、打ち網を「楽しむ」ことではない。「楽しさ」はその過程に、ぴょこぴょこ見え隠れするオマケみたいなもののようだった。 一見クレージーに見えるほどパワフルでせっかちでキャアキャアはしゃぐおじさん達を見ていると、釣れへんからいうていちいち凹むぼくが超マヌケに思えた。 釣る(捕る)ために、もっと技術を磨こう。 一生懸命に釣ろう。 ああ、なんておもろいんや!魚釣りは! 2001夏 オカナリトシ ![]() |