Angling Net / Story of Great Topwater Plugs

缶ビール賭けてビッグバド
Heddon Big Bud

見れば見るほど変なプラグや

今でこそ、ヘドンのビッグバドと言えば泣く子も黙る夜の帝王、ナイトバシングの必須アイテムになってるけど、ほんの十年ほど前はこんなプラグで、しかも水面でバスを釣ろうなどというやつはおらんかった。少なくとも私の周囲には居なかった。

夏の盛り。とあるダム湖へ、炎のトップウォータープラッガー南部茂樹と出かけたときのこと。ボートのバウでエレキを回しながら
「先月これで51cm釣ったんですわ」
と、取り出したのが件のビッグバド。彼はこれはトップウォータープラグやと言う。
私は長い間バス釣りをやってきて、ただのいっぺんもこのプラグを投げたことがなかった。どっから見てもディープダイバーやんか。
ところがその泳がせ方を見て、ビッグバドは紛れもないトップウォータープラグやったことを知る。

その日の釣りは我々の思惑を大きく外してた。
かいもく出えへん‥‥‥出渋る日のトップウォータープラッギングほど退屈なものはない。ボートは気力を喪失させながら漂いつづけた。明らかに退屈していた。

「一匹目、釣りの後の缶ビール賭けましょか」
退屈しのぎの彼の提案に、もちろん私は同意した。
「オッケイやろやろ」

で、ふと思いつく‥‥‥缶ビールには缶ビールを。
ビッグバドをラインに結ぶ。そして偶然にもワンドの奥の倒木の下にキャストが決まる。と、沈黙を守り続けてた水面が、突然「凹ッ!」

「出た!」

小さな水柱が上がって尺にもたらんショボいバスが釣れた。小さなバスは私に缶ビールをプレゼントしてくれた。この日唯一溜飲を下げた一瞬やった。もし賭けたのが缶ビールやなかったら、私はたぶんボーズに終わってたやろ。