Ikasas Ikuy Marvelous World / Topwater Bass Fishing
"MUSKY JITTERBUG WITH ME"
Written by Monja Okamoto
現在のボクのバス釣りの1スタイルとして定着しているマスキージタバグですが、ここまでのめり込むまでの経過を思い出してみようと思います。
少しずつ釣り方なども変わってきてますので、現在とは違うところもあります。記憶も曖昧な点が多いかもしれませんが、釣り方やタックルの詳細などより、のめり込んで行くさまに興味を持っていただけたらと思う次第であります。
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1‥‥‥出会い
1980年代中ごろ
プラ製“ネズミ”カラーのマスキージタバグを一つ買った。使う気はさらさらなかった。
部屋に飾るために買った。以後10年ほど壁に掛かったままになる。
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2‥‥‥きっかけ
釣り新聞「Sport & Fishing NEWS」の編集部員、タムラ君。
彼の存在なくしてマスキージタバグは語れない。(現在、彼は大工さん)
1995年秋。
そのときボクはデザイン事務所で「Sport & Fishing NEWS」のデザイン・制作を担当していた。その日も遅くまで制作作業をしていたが、原稿を持ってきたタムラ君と釣りの話になった。
「ああ、今ごろちょうどいい時間ですよー」
え? 夜の10時過ぎてますよ。シーバスの話??
「いえいえ、バスです。デカいのが出るんですよ」
ふぇ〜、バスも夜釣り可能なのかぁ…。トップで?
「そーです、あのデッカいジタバグです。あれで釣るんですよ」とタムラ君が言った。
バスを夜釣りで、なんて初めて聞く。しかもマスキージタバグでやるなんて…。
そのまま彼の七川ダムでの話に引き込まれた――。
数年前(1995の数年前)の秋の夕マズメ
フローターでバックウォーターを1/2ozのトップウォータープラグで攻めていたそうだ。それまで沈黙だったエリアに見切りをつけ、別のバックウォーターへ移動。そのポイントにはなんとなく“生命感”のようなものを感じたらしい。
さっきまでのポイントと一変して、反応がすこぶるよい。日が暮れるにしたがってワンキャスト・ワンヒット状態にハマることになる。イヤというほど出るもんだから、プラグを段々と大きくしていったと言う。
5/8oz、3/4oz…。まだ出る。もう辺りは真っ暗。
えーい、思い切って1ozのプラグだ!、そう思って投げたプラグにもバスは飛びついてくる。
調子に乗って、投げたこともないマスキージタバグを結びつけた。それでも出る。このデカいプラグをあたかもバスが待ち望んでいたかのように。しかも全て40アップ。最大49cmという、当時にしたらモノスゴイ出来事だった。笑いが止まらなかった、そう教えてくれた。
スレてないというリザーバーのコンディションもあったかもしれないが、マスキージタバグで釣ったという話は初めてだった。
しかし不思議なことに「ほんまかいな?」という疑いの気持ちは一つもなかった。彼が50アップを数えきれないほど釣っているのは、話を聞く前から知っていた。
「そうか、ナイトのマスキージタバグだったのか…」
そんな感じで、ボクの心はもうフィールドに向かっていた。 目の前の作業などほっぽり出したい気分だった。
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3‥‥‥開始
ネズミカラーのマスキージタバグは実家の部屋に掛かったままだ。
奈良にあるショップをいくつかまわってみた。ウッド製のレッドヘッドとパーチがあったので買った。フックをがまかつの#1に交換。 両ワキのフックはリグごと外して、代わりに腹部に1個。このフックチューニングはタムラ君から教わった。 バランスが良くなり、フックアップする率が全然違うとのこと。
この雑なつくりのアメリカンビッグプラグをなんとかしてあげたい気持ちからか、直接釣果には関係ないかもしれないが、さらにボクは手芸用の“目玉”を埋め込んだ。
とにかく、これで“思い入れ”はバッチリである。さっそく自宅から車で30分の津風呂湖に向かう。
夜の10時ごろ、オカッパリ――。
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4‥‥‥タックル
その当時のタックルは以下のような感じ。
ロッド:スーパータムライク FO-60ビッグプラグオンリー
ボクがタムラ君に頼み込んでブランク選びからをお願いし、作ってもらった。 2番ガイド以降がすべて2番ガイドの小さなモノを使っているので、シャープな感じ。 グラス製だが、いたずらに“ベナベナ”していない。
リール:フルーガー2600
こんなにビンテージ価値が上がるとはつゆ知らず、発売当時に普通の値段で買ったもの。ずっと現役で使い続けていた。ギアがすり減って、キャスト時には奇妙な金属音がする。 (後にタムラ君のアグリースティックと交換)
ライン:無名ブランド「プロ用」5号
タムラ君の教え通り、ワゴンセールのナイロンライン。品のない蛍光イエロー。侮るなかれ、現在も使用しているがトラブルなど一切ない。
ノット:ユニノット(4回通し)
3回で十分だが、ボクは「しとめる」という意味のゲンを担いで、4回通しにしている。 スナップスイベルなどはカッコよくないので使わない。
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5‥‥‥キャストしてみる
ロッドティップからぶら下がるマスキージタバグ。重みのため、この時点でティップはずいぶん曲がっている。
「だいじょうぶかなあ…」とりあえずバックスイング。
「うっ、重たい!」手首に痛みを覚えるほど。
始めは距離も出ず、ぎこちなさも感じたが、数投するとコツをつかめた。 グラスロッドの粘りを利用する投げ方をしないとうまく飛ばない。
うまく飛ぶようになると「キャスティングってこんなに楽しいものだったとは…」と目ウロコ。
目の前の闇はオープンウォーターだった。 向こう岸に届く心配はないので思いっきりキャスティングを楽しんだ。
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6‥‥‥リトリーブ
その頃は、着水後、間髪入れずリトリーブを開始していた。ややゆっくり目でアクションはつけない、いわゆる“タダ巻き”だ。
カポカポカポカポ…
闇の中では聴覚がことのほか機敏に反応する。少しの音の違いで、「あ、フックが背中に乗っかってる」だとか、「葉っぱがアイに絡まったな」とか分かるようになった。
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7‥‥‥記念すべきファーストバス
散々引き倒した真正面のオープンウォーター、数十投目に足元近くで「カッパーーンっ」と出た。
ピックアップ寸前だったのでビックリ。フッキングもなにも、勝手にプラグを持っていってグングンとファイトしている。
やった! マスキージタバグで釣ったぞ!!
結構強い引きだったが、リールを数回巻くともうバスはロッドティップ付近だった。そのまま岸にズリ上げた。
メジャーはなかったが45cmくらいのバスだった。
その後、夜明け間近にもう1匹追加できた。これも45cmくらい。「簡単に釣れるんだなぁ」なんて思ったものだ。
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8‥‥‥その後
一晩に5〜6バイト、うち2〜3匹をキャッチ、という感じで順調に釣れた。サイズは40アップが中心だが、20cmにも満たない小バスも結構な割合で釣れた。
「デカいプラグには、デカバスしか出ない」なんて、いったい誰が言ったのか…。その年は50アップが出ないまま、冬を迎えた。
翌年の初秋、再開するがやはり50cmの大台には届かず…。そんなある日、大事なマスキージタバグ(イエロー)を向こう岸に引っ掛けてしまう。
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9‥‥‥フローターでの釣り
しまった! とうとうロストか…。いやまて、確か弟がフローターを持ってたなぁ。さっそく電話して実家へフローターを借りに行った。
次の日ロストした場所へ行き、初めてのフローターで回収成功。その日は釣りをせず、ただ回収しただけ。フローターはそのまま借りることにした。
数日後、オカッパリで慣れた津風呂湖でナイトに初フローターを決行する。真っ暗な中、一人で湖面に出る。意外と恐怖感はない。暗さゆえ、目からの情報量の少なさがかえって幸いした感じ。
目が慣れてくると、岬の存在や、オーバーハングなのかガレ場なのか、くらいはわかってくる。
しかし、“距離感”が全くない。キャストしながら「遠いか、近いか」を確認していく。
遠いと思ってフルキャストするとガレ場の斜面に激突なんてことは当たり前だった。
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10 ‥‥ライトについて
暗いならライトで確認すれば? なんて普通は思うだろう。しかしその当時はライトで魚が散ってしまうと思い込んでいた。
実際のところはどうなのか知らないが、とにかくライトを付けるときはプラグを交換する時くらいで、ポイントを照らすのは最小限に留めた。暗さに目をならすことが大事なので、不必要なライトは絶対に避けていた。
また、星も出てない曇り空でも真っ暗やみではないことを知った。周りを山で囲まれた湖でも、なにがしかの明かりがぼんやりとしている。満月の夜なんてポイントがまる見えになるので、キャスティングがバシバシ決まって釣りやすい。
会社返りには夜空を見上げ、月を探すクセがついた。
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11 ‥‥フローターに慣れたころ
バイト数は多くなったが、釣れるサイズは40アップまでで、たいしてオカッパリと変わらない。
「そろそろ50アップが欲しいなぁ…」
ここ(津風呂湖)じゃこのサイズが限度かな?
タムラ君に誘われてマスキージタバグの釣りに入り込んだわけだが、不思議なことに彼と同行することは一度もなかった。特に彼のテクニックを盗もうとか、そんな必要性がなかったからだが、ある日、タムラ君に池原行きに誘われる。
「今晩、ボク行ってますけど、どうですか?」おおー! 行きます行きます!
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12 ‥‥池原で初フローター
曇り空の秋の晩、12時ごろ現地に到着。
すでにタムラ君の車があった。もう先に釣ってるハズだ。用意をしていると、闇の中からボクを呼ぶ声が聞こえた。タムラ君だ。
8時ごろ島まわりで50cmジャストを1匹のみ、だと言う。同行しているIさんはノーキャッチらしい。
あまりにサラッと報告するので、「やはり池原、50アップがたくさん釣れるんだろな…」と思った。
10mほど離れて3人で谷に入る。
ボクはマスキージタバグ。タムラ君は道楽のアブラゼミだった。
「谷は釣れることは釣れるんですけど、サイズが40アップ止まりなんですよね…」なんて言うタムラ君。
そんなことわからんぞと思いながらキャストを繰り返した。バイト数は明らかにボクの方が多かったが、なかなかキャッチできない。
タムラ君が目の前で46〜7cmのバスを釣った。くそっ! 早く1匹釣りたいナ…。
谷では結局バイトのみ。
大きな岬に3人は移動した。ボクに先頭を釣らせてくれるという。
キャストを繰り返すがバイトがない。シトシト雨が降ってきた。粘る気はなかったがなぜか移動せずにその大きな岬めがけてロングキャストを繰返した。
「がぽ」
ん? いま、小さな捕食音が聞こえたような…。
すかさず同じ所へキャスト。
リトリーブを開始し、岸とボクの中間地点くらいにさしかかったとき「どば」っと出た。
ギューーンと下へ持っていかれる。ん? これはひょっとして…。
48cmというのが津風呂湖での最高だったが、この引きはかなり大きいヤツかもしれない。
スーパータムライクが弓なりに曲がる、フルーガー2600のドラグがズルズルすべる――。
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13 ‥‥初めての50アップ
無事ハンドランディングできたが、腹フックの一本が折れていた。
リアフックも掛かっていたのでなんとかバラさずに取れたようだ。
ふい〜危ない危ない。計ると52.5cmもあった。ついにマスキージタバグで50アップを釣った! 嬉しさが込み上げてきた。写真を数枚撮ってもらったが、写真なんてどうでもよかった。生きててよかったとさえ思えた。
Iさんから
「ほら、もうすぐ余韻にひたるようにタバコ吸いよるで」
なんて冷やかされた。その通りに一服する。こんなに美味いタバコは久し振りだった。いまのファイトを何度も頭の中で思い出しては、けむりを吐き出した。
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14 ‥‥それから‥‥‥
フローター禁止になってしまった津風呂湖へは行けなくなり、釣行回数も減ってしまった。しかし、フィールドを池原に切り替えるよいきっかけになったと、今では納得している。
そんなこんなで現在に至る。
2000年10月5日記
本稿は親愛なるもんじゃ岡本氏のご厚意で掲載しているものであります。氏の運営されるウェブページ「jammon」はまことに面白い。抱腹絶倒まちがいなし!是非いちどお立ち寄りを‥‥‥。
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