Angling Net / The Grotesque Night 毛鉤で釣る川のドンコ ![]() 釣り人:ボンビー横山 ドンコ(16.5cm) 武庫川の中流部、宝塚市にS川という川がある。 昔から暴れ川で有名。なんべんも洪水を起こしては流域住民を悩ませてたらしい。しかし今では砂防工事が進んで、川はすっかり大人しくなってしもた。 人間にとっては都合よう川を治めたつもりやろけど、砂防堤のせいでまるで棚田か段々畑のような変な川になってしもた。 こういうことはこの川に限ったことではない。日本の川はすべからくどこでも人間の手が入ってる。「治水」を歌い文句に随分無茶苦茶なこともしてるよ。建設省のお役人が「自然を征服した」などと暴言を吐く昨今。我が母なる川「武庫川」はいつみてもどこかにブルドーザーやユンボがはいってる。建設省は仕事がなくなると思い出したように川をほじる。 それはさておき、砂防堤の溜まりにもいろんな魚が息づいてる。オイカワ、カワムツ、ヨシノボリ、カマツカなどがこの川の住人。 まず、ゴルフ場前の堰堤から毛鉤で釣り始める。釣り人はマーキー横山。フライはエルクヘアカディス18番。と、いきなりオイカワが釣れる。なかなか良形。 ライズは頻繁に起っててヘタクソにも簡単に釣れる状況。すでに上半身は裸、下半身はパンツいっちょうのボンビー横山。ええ歳をした大人が半裸で川の中を走り回っている姿は、川沿いを走る路線バスの乗客からは「異常者」に映ってるはず。しかし本人いたって平気。 「きた!」 突然、珍しい魚が釣れる。のたのたと重く鈍いファイトはドンコ。 今でこそ珍しい魚やけど、昔は極ふつうに見られた魚である。ゴルフ場から流れ出る大量の除草剤のせいで数が激減してる。漢字で書くと「鈍子」と書くらしい。たしかに動きは鈍重。グロテスクな顔が愛くるしい。こういう魚が釣れると心が豊かになる。 ![]() |