Angling Net / Fly Fishing Today

ちょっとおかしんちゃうんか
九頭竜川の大名行列のこと

福井県の九頭竜川はサクラマスで有名になってしもたけど、ここへ通い始めた1980年代後半は、まだそんなに知られてなくていつ行ってもガラガラやった。好きなポイントを好きな様に釣ることが出来た。

ところが、東京近辺のナンバープレートを付けた大型四輪駆動車が河原に乗り込んで来るようになってからはちょっと事情が変わってきた。
どうも、ハンティング帽をかぶったおっさんが雑誌に紹介したんが原因らしいねんけど、そいつらは徒党を組んでやってきて、みながみなダブルハンドの10何フィート10何番ちゅうような、ぶっさいくなフライロッドを振り回しよる。
ほんで、そいつらは30m位の間隔に並んで、上流から順番に釣り下ってきよるんや。
ある時、サクラマスのジャンプを見つけたからそこで粘ってたら、全員どかたの親方みたいな格好のそいつらが5〜6人で釣り下がってきて先頭のやつが

「一カ所で立ち止まって釣っちゃいけないよ」

と、ぬかしよる。

「チェリーサーモンは上流から順番に釣り下がりながら釣るもんだよ」

と、ぬかすんや。

「なにがチェリーサーモンじゃ、だいたいそんなルールだれが決めてん。ほたら何かい、この川ではクソ長い竿振って、鳥撃ち帽かぶって、どかたの親方みたいな格好して、順番に並ばへんかったら釣ったらあかんのんか。おまえら大名行列か!」

と、心の中で呟いたんやけど、多勢に無勢、けんかしたら負けそうやしすごすごと退散したわけや。

せやけど、サクラマス釣るのに、なんであんなごっつい竿いるねやろ。たかだか60センチあるなしの魚やんか。北海道で9フィート9番のロッドで80センチ超えるチャムサーモン釣ったけど、シングルハンドでじゅうぶんいけるで。
だいたいあの格好見たら笑うで、80年前のイギリス人やんか。
ハンティングかぶってあの薪割りみたいな格好が情けなすぎるわ。
体力錬成か? 新体操の団体演技やないねんから‥‥‥


     
ハンティングかぶって雑誌に紹介してたおっさんの理論は正しいと思うで。たしかにダウンクロスにロングキャストして、フライ沈めて、底を流したら確率高いわ。
それはそれでええねん。けど、なんで全員同じやりかたやのん?
なんで服装まで真似せなあかんのん?
オリジナリティとか知恵っちゅうもんがないんか?
あんたら脳味噌も生きてるうちに活用せな腐ってまうで。

九頭竜川へ行かんようになって、随分になるけど、今でも東京近辺からハンティングかぶってダブルハンドロッド振る団体は通うてるんやろか。
富山県の河川が事実上の禁漁を宣言した今、九頭竜をもう一度見直さんとあかんねんけど、あのハンティング党がまだ生き残ってるねんやったら、俺はこの釣りはもう止めよと思う。

1994年頃のメモより


 Hard Trout Fishin'