Angling Net / Trout Fishing 越中五箇山庄川の遅い春 (3/3) ![]() 山の宿 雨が上がったかと思えばまた‥‥‥ 三日目の朝、四時に目を覚ますと外は一段と激しい雨。 一度起きだしたが山の朝は寒い。そのまま布団に潜り込む。屋根を打つ雨音を聴きながら再び眠りに堕ちる。幸福な惰眠をむさぼる。 遅い朝、目が覚めると雨は小降りになっていた。階下へ下りると宿のばあちゃんが心配そうな顔で 「あんたさ今朝は釣りに行かんがやったか」 「ごっつい雨降っとったから‥‥‥」 「おおそうかそうか‥‥‥ごはん食べられい」 ![]() 民宿まいだの稗飯 町に住むものはこれを有難がって、あるいは懐かしがって食べるらしい。 少し臭いがあるが香ばしくて美味い。噛めば稗独特の素朴な風味が口に広がる。町では決して味わうことのできない味である。 ![]() 民宿まいだの玄関 ここが天国の入り口なのかも知れない。十数年来、毎年やって来るが何一つ変わらない。 この玄関を通って釣りに出かけ、疲れ果ててここへ入る。 玄関先に卑猥な形の木がある。枝打ちされた古木の切り口のようである。 朝食後、雨が上がったので遅い釣りに出かける。既にダムは放水を開始している。 ![]() 虹鱒‥‥‥ 岐阜との県境に近い庄川本流の落水へ入る。流れ出しの下で小さな虹鱒を釣る。 色は鮮やかだが未熟で脆い魚体。去年の成魚放流か。鰭は回復してきれいに伸びているが‥‥‥小さい。 釣っているとまた俄に雨が降りだした。大粒の雨が背中を叩く。体が冷える‥‥‥が、心は温かい。 29 April 2000 Ikasas Ikuy ![]() |