Angling Net / Trout Fidhing

渓流アマゴと遊ぶための一本

I.M. Minnowing Rod(四尺六寸)
名に印鑑まで捺してある。「功」の文字が渋い。


竹‥‥‥

高松のレイチューン上原の師匠のIM氏に、渓流ミノーイング竿の制作を頼んでた。コンセプトは「楽しめる竿」。
そんな竿が実際にあるのかというと‥‥‥ある。

去年、愛媛の渓で釣りをしたとき、R上原が使っていた竿がこの竿。一目見るなり欲しくなり、無理を言って作ってもらうことにした。
私のようなミノーイングド素人が、使いこなせるような竿ではないかもしれないが‥‥‥。

話に聞けばIM氏は和竿師の二代目であり、相当な職人気質らしい。マスコミ嫌いで表舞台に姿を見せることはない。しかし知る人ぞ知るミノービルダー、つまり四国の巨匠である。私はまだ一度もお会いしたことがない。

「作っとくなはれ」‥‥‥と、お願いしてからちょうど一年。依頼したことを忘れているのではないかと心配し始めたころ、やっと出来上がってきた。

第一印象‥‥‥細い。軽い。美しい。
こういう道具を手にしたら、いても立ってもいられない。早く振りたい。で、さっそく貞光川のアマゴ釣りに使う。

キャスティング‥‥‥レイチューンミノーを結んで投げてみる。おおっ、投げにくい。軽すぎて力の入れどころがつかめない。ロッドがしなる分タイミングがズレる。わかっていてもズレる。サイドハンドキャストでリリースポイントがズレると、もう釣りならない。手が覚えるまでかなりの時間を要する。しかし慣れてしまえばこっちのもの。あとはお楽しみだけが残る。


バット部分‥‥‥籐の飾り段巻きが美しい。クラシカルテーストを醸し出している。握りはコルク。籐なら言うことないのだが‥‥‥。ブランクは細いがトルクは結構ある。大物をかけてみないとわからないが、相当やれそうな気がする。

竹の節目‥‥‥見事である。正直なところを言うと、ここに惹かれてこの竿が欲しくなった。実に見事である。
ラインは0.4〜0.6号、ルアーウエイトは一匁以下。大胆かつ繊細なテクニックが要求される。
チップ部分‥‥‥チタンフレームガイドを使用している。驚くほど軽い。振り抜けが軽快になる。コントロールがしやすいはずだが、ウデが‥‥‥。
スレッドは半透明の琥珀色。使い込んだ味がある。


お気づきの方もあろうかと思うが、実はこの竿、竹ではなくカーボングラファイト製。だますつもりは毛頭ない。逆に、まるで竹竿のような仕上げになっていることに魅力を感じている。
竹はたしかに素晴らしい自然素材だが、超軽量ルアーを素早く投げたり、微細なアクションを与えつつリトリーブする釣りには不向きだ。それでもなお、竹は魅力的である。竹ほど日本の川の風景に馴染む素材はない。

こういう竿を使うことは、私にとって非常に贅沢なことだが、一匹の魚の価値を数倍にも増幅してくれる。釣りは心を豊かにしてくれる遊びだということを実感できる、そんな道具である。


 Hard Trout Fishin'