Ikasas Ikuy Marvelous World / Trout Fidhing

岩魚を釣るためのタクティクス
とある淵で一年間温存してあった岩魚を‥‥‥

イワナ 33.0cm 富山県T川 釣り人:チルドレン中野

ちょうど一年前の秋のこと。T川のとある淵で、尺上岩魚をなんべんも食わせ損のうてしもた。なんで食わへんのかわからんまま、上流のダムの放水が始って無念の退却を余儀なくされる。
ほんまに食うのがヘタクソな岩魚やったなあ‥‥‥。岩魚に言わせると、私の食わせ方がヘタクソということになるんやろけど。

その時の岩魚の姿を忘れ得ず、半ば執念にも似た気分で翌シーズンを迎える。しかし北陸の山間部の春は遅うて、くだんの岩魚の棲む淵はおろか、雪代がんがんで入系すらままならん状況やった。

秋、「今度こそは」の思いでシーズン最後の岩魚釣り(福福釣り大会)に出かける。もちろん狙いは一年越しのあの淵のあのイワナ。釣法はミノーイングオンリー。この方法で釣らんことには意味がないからなあ。

というわけで、くだんの淵のくだんの岩魚、この一年間だれにも釣られんと私を待っててくれた。

第一投目からファスト&ショートトゥィッチングに魅了されたか、大口開けて追いかけてくる。口の中のエラの赤い色まで見える。追いすがっては体を反転させて食らいつこうとする。しかし、3べん追うて3べんともミノーを舐めただけですべて空振り。

「やっぱりこいつは食うのヘタクソや。どんくさいやっちゃ。」

そして4投目、5投目はとうとう出てこんかった。

「あかん、今年もよう食わへん(食わさへん)。ここは一息入れるかルアーチェンジやな‥‥‥釣れるまでやめへんぞ!」

と作戦を練っているところへ、後からきた同行のチルドレン中野。この御仁、クラブの先輩やけど渓流ミノーイングは超ど素人。硬い竿に太い糸、それにミノープラグはヤスモンのプラスチック製(一応ワカサギカラーの5cm)。しかしまあ、気の毒やけどそんなタックルじゃ釣れまへんで。

「ナカノさん、その淵の壁際にデッカイの着いてますよ」

「へえ、そう‥‥‥ほな投げてみよか」


キャストは一応決まる。が、しかし、リトリーブはかいもく。棒引きのタダ巻き。これで釣れたら泣いてもたらんわ。

グリグリグリグリ‥‥‥ゴツン!

「お、きたきた!」

「う、ウッソや! そんなあ‥‥‥」

硬い竿がグリップから曲がってる。

「オーマイガ! アンビリバボー!」

しばらくやり取りの後、一年間あたためてきた私の尺上岩魚は河原でドタンバタン(上の写真)。ああ、なんちゅうこっちゃ!

しかし、なんで私に来んとナカノさんに来たのか‥‥‥?
答えは簡単。

■ 岩魚を釣るためのタクティクス‥‥‥
大きな岩魚は動作が鈍い
ファースト&ショートトゥィッチングは逆効果
したがってゆっくり見せてゆっくり食わせる
つまりスローなタダ巻きでじゅうぶん
ただそれだけのこと

それがわかるのに一年かかってしもた。ああ‥‥‥。


september 2000
Ikasas Ikuy


 Hard Trout Fishin'