Angling Net / Hard Trout Fishing

南信州できれいな岩魚を釣ること (1/6)

「岩魚が釣りたい」‥‥‥
毎年、必ず沸き起こる欲求である。それは都会に住む釣り人特有の、かなり贅沢な願望だ。
そしてそれを満たすには、それなりの覚悟を決めて遠くへ出かけなければならない。それだけの値打ちが岩魚にはあると、都会の釣り人は信じて疑わない。
しかし、なぜ岩魚なのか。他の渓流魚ではだめなのか。その答えは都会の釣り人自身も分からない。もしかすると、自然への回帰願望なのかもしれない。山から湧き出した清冽な流れに潜む深山幽谷の友を求め、都会の釣り人は見知らぬ渓に分け入るのである。



そんなボクに、岩魚を釣らせてやろうという御仁が現れた。「はい、岩魚はいつも釣ってます」「ええ、ミノーなら簡単に釣れます」と、サラリと仰るのである。上出啓一郎(芸名=パパラギ)氏、その人である。

南信州といえば、二十年前に白樺湖でルアーを投げて以来だ。思い起こしてもそれ以外に信州で釣りをした記憶はない。

気が付くと、「絶対に釣れる」「確実に釣れる」「簡単に釣れる」という、いつもの甘い殺し文句に誘われて、ついフラフラと腰を上げてしまうのだった。
こういう場合、実際に行ってみると「ああ、来るのが少し早すぎたね」だったり「うーん、もう一週間あとだったらなぁ」であったりするわけで、タイムリーに爆釣したという経験はいたって少ない。それでも、行かないではおれない性分なので、毎度のことながら、結局、だまされたと思って行ってみることになるのである。


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