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川は長いダストシュートなのか



市川鶴居「屋形橋」下流付近
川沿いの町工場前の川原はゴミ捨て場


兵庫県市川の鶴居あたりで最後にオヤニラミを釣ってからもう十五年になるなあ。もっとも二十年前でもそんなに簡単に釣れる魚ではなかったけどね‥‥‥。
釣れんようになった理由は単純明解。川の水が汚れたからやね。ゴルフ場や宅地造成による森林伐採。工場排水などが主な原因。

おまけに鶴居の屋形橋の下は付近住民のゴミ捨て場になっている。釣りをしながら見ていると、近所のおばちゃんらが入れ替わり立ち替わりやってきては橋の上や土手からゴミを放かしていかはる。

あるとき、イブニングライズを待ちながら川を眺めてたら突然、雨のようなライズ。「‥‥‥ん?」頭の上を見上げると老婆がちり箱をぽんぽんとたたいてますねん。

「おーい、おばあちゃん何すんねんな」

老婆は「はあ?」という表情でこっちを見下ろしてる。まるで「ゴミ捨て場にゴミほって何が悪いねん?」という顔やね。まったく悪気がない。このおばあちゃん、きっと娘さんのじぶんからここでこうやってゴミほかしてきたんやろな。道理で橋の下だけ異様に浅いわ‥‥‥。ゴミが堆積して浅瀬になってるんやね。

「おばあちゃん、川にゴミほったらあかんがな」
「すまんのう、人が居るとは思わなんだ。ゴミかぶったかのう?」
「そやないねん。川が汚れるゆうてんねん」
「大丈夫じゃ、雨が降ったらまたきれいになるで」
「‥‥‥‥‥‥!」

ニッポン人にはものを「水に流す」とゆう考え方がある。厭なことや悪いことは「水に流して」きれいさっぱりしようという考え方ですわ。たしかにその場はきれいになるけどね。しかし流された水の方はたまらんよ。汚れたままどんどん流れていくんやからね。ニッポンジンの場渡り主義が見え隠れするなあ。

つまり、ゴミ箱のような川で釣りをしている私ですわ。ニッポン人にとって川は長いダストシュートなんやろか。


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