Angling Net / My Humble Opinion My Humble Opinion 海は巨大な浄化装置なのか 漁村のひなびた風情は郷愁を誘うけれど 富山県の新湊漁港へ釣りに行ったときのこと 信じがたい光景に出会う‥‥‥ 天気予報が「今夜は大雨が降るぞ」と言うので、少しでも濡れずにすむポイントを‥‥‥と、新湊の旧港と新港を結ぶ橋げたの下に陣取る。まだメバルには少し時間が早いが‥‥‥。 竿を振っていると、どこからか還暦を過ぎたぐらいのオバサンがやってきた。手にはてんぷら鍋のようなものを持っている。 突然、オバサンは慣れた手つきでそれをひっくり返す‥‥‥と茶色い液体がドドドッと海へ。 突然のことにあっけにとられる。 オバサンは「ナンカモンクアルカ」という目つきで私に一瞥くれると何食わぬ顔でスタスタと去っていった。 直後、いやな臭いが‥‥‥ん?油! 使い古したてんぷら油の悪臭が辺りに立ちこめる。 なんということを! 海面はギラギラした油膜が長い帯状に拡がっている。 おーまいがー! 上の写真がその現場である。 ちょうど頭の上(右上)に連絡橋が架かっていて多少の雨ならしのげる。しかも橋の上からオレンジ色の街灯が点灯してメバル釣りには絶好である。 ‥‥‥と思ったのだが。 漁港のあちこちに「遊漁者の皆さまへ」という立て札が立っている。それにはこう書かれている。「漁港は漁民の生活の場です。ゴミは捨てずに持ち帰りましょう」 くだんのオバサンはこの町の住人である。遠い所からわざわざてんぷら鍋をさげて油を捨てに来るはずがない。きっと漁業者の家族にちがいない。そして、ずっと昔からこうやってゴミや廃油を海に捨て続けてきたにちがいない。 以前、兵庫県の市川で橋の上からゴミを捨てるお婆さんのことを話した。川は長いダストシュートにされてしまっていると‥‥‥この状況とオーバーラップしてしまう。 捨てられた油はいずれ拡散して目の前から消えるだろう。人間にとって海は巨大な浄化装置なのか。 30 April 2000 Ikasas Ikuy return to think aloud |