Ikasas Ikuy Marvelous World / Special Contribution


   Trolling tour
                    文・写真提供:小西啓介

あれほど時間とお金を無駄にした釣りもなかった。

ハワイでの仕事の後、
釣り好きでもない仕事仲間が
 ハワイの釣りは面白いらしいですよ
と トローリングツアーのリーフレットをボクに見せた。
不味い食い物が溢れるホノルルで
群を抜いて旨い中華料理を出す麒麟という店で
ボクは蟹のチリソース和えを食べながら
そのリーフレットを興味なく眺めたことを憶えている。
どうにもトローリングツアーには心躍るものがなかった。

しかし 普段釣りなどしない連中に限って
こういうもので安っぽいリゾート気分を満喫しようとする。
ひとり部屋で寝ているわけにもいかず
翌朝 渋々と桟橋へ向かったのである。

未だに未経験ではあるが
湖でのトローリングはいつか挑戦してみたいと思っている。
自分で仕掛けを流し、操船する。
これは間違いなく「釣り」である。

仕掛けも操船も船長まかせで
サカナがかかったときにだけ順番にファイティングシートに座らされ
 さぁ巻け さぁ巻きつづけろ
などと強制されるこの行為において
ボクたちはいったい「釣人」なのだろうか。
こんなもの電動リールにでもやらせればいいのだ。

ボクは、予想通りばかばかしくなって
帰港時間までキャビンで昼寝をしていた。
その間に同行者がなんとかという2m近いサカナを揚げていたが
そんなことはどうでもよかった。
早く帰ってホテル裏の水路でルアーを投げたかった。

港でサカナを吊るして記念撮影などをした後、
サカナはどうするのか と訊ねると
揚げたサカナは船長のものと決まっているという。
客が持って帰りたいと言えばどうするのか と訊ねると
いやこれは船長のものだから客は記念撮影で終わりだという。
どこまで人をバカにした釣りツアーなのだろう。

悔しかったら
クルーザーでも買って己の好きなようにやりやがれ
ということなのだろうが
それは一生叶いそうにもないので
大金持ちの釣り好きの友人ができるまで
ボクはこの釣りをご遠慮することにしよう。


Special contribution by Keisuke Konishi
11. apr. 2005


本稿は友人小西啓介氏の承諾を得て「gacha's box」より転載したものです。


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