
Gokayama Rattan basket and
Heddon Dying Flutter
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どうしても
釣り人にはどうしても釣りたい魚があった
あらゆるものを犠牲にしてでも
釣ってみたい魚だった
大きな魅力を秘めた魚だった
しかし
それは絶滅をささやかれている魚だった
かつてその魚は
大地を流れる川という川を泳ぎ回り
その美しく逞しい勇姿を翻していたのだ
ところが
乱獲に次ぐ乱獲で
その生息数を減らし続けているという
まさに絶滅しようとしているのだ
自然保護団体が
絶滅魚種を釣らないようにと呼びかけている
釣り人も
それは十分理解している
そっと見守るべきだと思っている
しかし
どうしても釣りたい魚なのだ
一匹だけでいいから釣りたい魚なのだ
『俺ひとりぐらいいいじゃないか』
『俺ひとりぐらい‥‥‥』
釣り人は自分のエゴを口にしてしまう
そして
激しい自己嫌悪に陥る

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