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真冬にトップでギルを釣る

ついこないだまで上空をマイナス35℃の寒気団がすっぽりと覆い、典型的な西高東低の冬型気圧配置。地上では木枯らしが吹き荒れて、日本列島は北から南まで寒さに震えていたというのに‥‥‥
■ギルは真冬でも出るのか?
「冬は出ませんよ」などと、やってみもしないで結論めいたことを言うと、かならず手痛いしっぺ返しがくる。まずやってみなければいけない。
試してみれば答えは簡単に出る。しかも、その答えこそが不動の真実なのである。
それに真実はひとつだけではない。釣り人の数だけ、あるいは釣り場の数だけ真実はある。

魚釣りほど机上論が役に立たない遊びはない。百戦錬磨の名人、鬼才、巨匠たちが極め尽くし編み出した「常道」「定説」「タクティクス」「セオリー」など、いとも簡単にただのド素人に覆されてしまうのだから。

さて、朝から春のような陽気である。
天気予報は「気圧配置が緩んだので今日は絶好の釣り日和だ」と言っている。「こんな日に釣りをしないやつはバカだ」と言ってる。あるいは「こんな日に釣りに行けない人は不幸だ」とも言っている‥‥‥。

よし、そこまで言うなら釣りにでかけよう‥‥‥。厳冬期の一瞬の緩みをついてブルーギルを狙ってみることにする。

池の隅、日だまりの障害物周りで盛んにライズが起こっている。
「おお!あれはまさしくギルにちがいない‥‥‥イタダキだ」
BUMS製ミニパッチホッコゲナを投げてみる。
着水して数秒。夏場とまったく変わらないパワフルなバイトが起こる。
しかし、プラグは浮いたまま‥‥‥その後も何度か弾かれる。
そして6〜7投目、やっとプラグが消し込んだ。竿を立てて聞いてみる‥‥‥
「乗った!」
ベストシーズンならなんでもないシーンだが、この時期にこういう出方で竿を曲げてくれるとやはり嬉しい。やや小振りの奇麗なギルだった。

よし、こうなったら今度はバスを狙ってみよう‥‥‥。
夏場、20cmクラスのバスが沸いていた池だ。びっしり茂っていたウィードもまばらになって、そこここに藻穴ができている。
水面を小さな羽虫が飛んでいるらしい。時々バスが虫めがけてライズしている。
「よし、これはイタダキだ」

しかし今日はほんとうに12月なのか。背中は春のような明るい日差しを浴びてぽかぽかしている。昔懐かしいような、贅沢な気分である。相手が小さなバスとわかっていても、楽しくうきうきした気分になっている。

アンツのミニパッチ・バナナを藻穴に投げてみる。
45度の斜め浮きでやや浮力に欠ける。レッドヘッドだけを水面に出す。吸い込むようなアタリが多いので夏場はあまり使わないが、こういう状況なら絶妙なチョイス。

藻穴で首を振るとすぐに「ゴボッ!」
竿を軽く立てるとジャンプしてばれてしまう。「オーマイガーッ!」
同じ藻穴へもう一度‥‥‥「凹ッ!」
今度はきれいに乗った。
「よっしゃー!」‥‥‥「おお!軽い!小さい!でも嬉しい!」いい歳をして豆バスにはしゃいでしまう。山あいのだれも来ない池だからまあいいか。
いや、だれも来ないと思っていたら背後に犬を連れた散歩のおばあさん。
「釣れますか?」「ははは、まあ‥‥‥ちっちゃいのんが、ははは」
思わず赤面してしまう。

幼魚虐待ではあるが、これは面白い。一匹だけのつもりが、もう一匹釣ってしまった。
「イケマセン、イケマセン」
と言いつつ、ニヤニヤしながら池を後にした。

その後、ナマズも‥‥‥と近くの川で日暮れまで粘ったが、そうは問屋が卸してくれなかった。ちょっと調子に乗りすぎたか‥‥‥。

5/december/2002
ikasas ikuy


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