元祖マディウォーターズ
1970年代製 "バルサクランクベイトナンバーワン"


これが長い間、人目に触れぬよう封印されていたマディウォーターズ第1号機 "BCB-1"だ。

1970年代後半のこと。
それは世間によくある話だが、バス釣りを始めてまだ間もないド素人が、無謀にもバスプラグを作ろうと考える。
何の知識もないクセに‥‥‥である。
そして出来上がったのがこの世にも不細工なバルサ製クランクベイトだ。
バルサクランクベイトナンバー1。略して"BCB-1"というわけだ。笑え、笑え、大いに笑ってくれ。
今から二十五年も前の話だ。つまり、ここから終わりなき長く辛い戦いが始まったというワケなのだ。

今ならこれがどんな動きになるか容易に想像がつく。しかしその当時は、知恵も経験も何もなかった。あるのはやる気と元気と勇気だけだった。恐れを知らぬ厚顔無恥の美少年だったというワケだ。わははぁ〜。

■フィールドテスト
ワクワクしながら池へ行って投げてみる‥‥‥あり?
軽い、軽すぎる‥‥‥。
風に流されて思わぬ所に着水する。
引っ張ってみる‥‥‥あり?
まったく潜らない。
全速でリールを巻く‥‥‥ありり?
それでもまったく潜らない。
"BCB-1"はバランスを崩しつつ水面をのたうつだけだった。
と、突然
水柱が上がってBCBは水中に消し込まれる‥‥‥

これは何かのマチガイではないかと思った。

ふるえる手でバスをリリースして、さらに投げる。
たいして強くもない風に負ける。
"BCB-1"は失速し思わぬ所に着水する。
強くジャークを加える。
潜ろうとするが潜れない。
と、突然‥‥‥凹ッ!

これは世間によくある話だが、当時の私には理解できなかった。
『いったいどういうことなんだ‥‥‥?』
バスは潜れない可哀想なルアーを虐めているのか?
それとも、そんなルアーを作った作者を嘲笑っているのか?

これがトップウォーターバス釣りだということに気づいたのは、それから何日もあとのことだった。つまり、納得するしないは別にして、生まれて初めて水面でバスを釣った記念すべき日とプラグだったのだ。

もともと"BCB-1"は、ビルノーマンの"Little N"やコットンコーデルの"Big O"のように、小気味よく水中をクランキングするハズだった。目論見は完全にハズれた。しかし、バスは次から次へと釣れた。そのとき、ボクの頭の中で何かが弾けた。

あのBalsa50だって同じような失敗から生まれたんじゃないのかと、ついつい疑いたくなる。みんな苦労して、失敗を重ねて磨き上げていったにちがいない。

ルアービルダーを志す世界中の若者よ、どうかご安心されたい。
だれも何も語らないけれど、だれでも最初はこんなもんだって‥‥‥。


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