Angling Net / Topwater Bass Fishing

Ching Dong Systemの夜明け

In the heavy rain from 3 o'clock of the midnight

夜中の3時から土砂降りの雨の中で

■ 午前3時

真っ暗な空からは冷たい雨が落ちていた
それも土砂降りと言って良いほどの激しい雨だ
手探りでフローターを水面に浮かべる

闇に向かってチンドンバグをひたすら投げ続ける
今日はこのプラグの試運転だ

大中之湖
十五年前いやになるほど釣りをした場所だ
しかし
こう真っ暗だと右も左も分からない
ちょっと力が入ると「ガサッ」とブッシュにくわれる
水面は雨で凹凹
プラグの位置さえわからない
ガシャポコガシャポコ
‥‥‥音だけが頼りだ

■ 2時間経過
バイトらしいバイトもないまま
夜が明け始める
投げたプラグが肉眼で捉えられるぐらいの明るさになると
途端にバスがボイルを始めた。

「ズドン」「ガボン」「ドカン」
「ズドン」「ガボン」「ドカン」

小一時間ほどの間に十発ほど出る

しかし
チンドンバグは一度も持ち込まれることがなかった
はじき飛ばされるか
波紋の真ん中にプカプカ浮いているだけだった

「???」

思うに
チンドンサウンドを出すことを意識しすぎていた
リトリーブスピードが速くなりすぎていた
バスにすれば
「もうちょっとゆっくり動かしてくれよ」
「食いにくいじゃん」
だったにちがいない
それにしても
これだけ出て一発も乗らないとは
トップウォータープラッギングは「出たらオッケイ」とはいえ
少しぐらいは竿を曲げたい‥‥‥

■ さらに2時間経過
雨は小止みなく降り続く
氷雨は容赦なく釣り人を叩き続ける
風が出始める
「風が吹いたらスィッシャー」という言葉が頭をよぎる
しかし
この日はチンドンバグで通すことに決めていた
こいつで出なければ意味がないような気がしていた
半ば意地になっていた

朽ち果てかけた乱杭周り
突然
「ガボッ」という轟音とともに大きな飛沫が上がった
2時間ぶりのバイトだ

「出た!」

チンドンバグは
泡とともに水中に消えた
おそるおそる
リールのハンドルをまわして聞き合わせてみる

「乗った!」

Mudy Waters "Ching Dong Bug" に出た42cm
下あごが突き出て体高たっぷりのダイナカバス

決して大きなバスではないが
忘れられない一匹になるだろう
おかげで充実した気分を味わうことができた
ありがとう
雨でズブぬれになった体の芯に
力がみなぎるのを感じた

悪くない
悪くない

家に帰ったら
このプラグをたくさん作ろう‥‥‥
雨でずぶぬれになりながら
そう思った


2002.9.28 ikasas


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