クラブマディウォーターズ・モニターレポート
 
Muddy Waters "DoMusky Jitter Bug"

レポート:吉田公樹

通称ドマスキー。
去年、岡さんが持っていたのを使って僕も欲しくなり
佐々木さんにお願いして作って頂いた。
Muddy Watersの新色、AAA-Dragonが非常に格好良い。
大きなネコ目の配置がハイセンスだ。
手作りのアルミカップは
なかなか面倒くさかったんじゃないかと伺える。

嘘かまことか、このドマスキー
漢字表記すると『怒鱒鬼』と書くらしい。
ご存知の通り、イトウは魚偏に鬼と書く。
これじゃあまるで
イトウを怒らせて釣るためのプラグではないか。
そのあたりをビルダーご本人に聞くと
「そやで。」
と、あっさりとした答えが返ってきた。
ホントか!?どうも乗せられてる気が・・・・・・。

これまで、僕がイトウを出した最重量プラグはMOB-S。
29gある。
ドマスキーで釣れば、大幅に記録更新だ。
プラグの腹には「だしよ」とネームまで入れて頂いて
「やってやろ〜じゃないか!」という気分になる。
フックをキンキンに研ぎ、万全の体制で臨む。

結果は驚くほど早く出た。
3メートルほどの川幅に、太い倒木が横たわっている。
その際ギリギリを、首を振らせながら通した時だった。

黒い影がサッっと倒木の陰から現れると
ドマスキーのフロントフックを「はむ。」と咥え
再び元のねぐらへとひるがえした。
「よっしゃ〜!!!」

辛うじてドマスキーが分かる・・・・・・かな?

58cm。
大きな部類には入らないけど、今期最高サイズ。
リリースする時
支える僕の手を「するり」と抜けていった時の感触を
今でもはっきりと思い出せる。
その体つきは太く、力強かった。

しかしこのイトウ、特に怒っている様子はなかった。
バイトもとても控えめで
あまりのボリュームに気が付かず、水面下で揺れるフックに食いついたんじゃないかと思いもした。

実際に使用してみると
ドマスキーはとても魅力あるプラグであることが分かった。
浅い角度で、下を向いたカップのおかげか
素晴らしい首振りアクションをする。
水面に張り付くようなスケーティングもこなす。
カップの生み出すボリューム感溢れる引き波は
同サイズであってもペンシルには出せないだろう。
その大きな引き波を見ていると
それをはるかに上回る強烈なバイトが想像されて
鼻血が出そうになる。あぶないあぶない。

ドマスキーをしばらく使うと
次に結んだオンスクラスのプラグが
とても小さく、物足りなく思える。
「これではイトウが気づかないのではないか?」
そんな不安に駆られてしまう。
少し困る。


2日目の朝。
深さのある、縦長のポイント。
件の不安に駆られ
ロッドの先にはドマスキーが結ばれている。

サイドキャストで上流へ遠投する。
そこから、ゆったりしたリズムで首振りさせていく。
だいぶ手前まで来て、「もう来ないかな?」
と思った次の瞬間、「ドバン!」と水面が炸裂した。

ロッドを柔らかく持っていた僕は
当然の出来事に対処しきれず
右手が引っ張られるかたちになってしまう。
テンションがフッと軽くなる。
急いで左手でハンドルを回すと
信じられないことに魚の感触が伝わってきた。

こいつ、ドマスキー咥えたまま走り回っていたのか!

イトウは怒り狂っていた。
60cmクラスでありながら
ミディアムのベイトロッドをグングン締めこんでいく。
僕が翻弄されるがままでいると
水面近くで反転し、ドマスキーを外して逃げていった。

間違いなく、今年最高のイトウだった。
バラした後も、しばらく足の震えが止まらなかった。
何よりも悔しい。悔しい!!

バスがトップに出る瞬間を初めて目の当たりにしたとき。
「ホントに釣れるのか?」と半信半疑で投げていたトッププラグに突然、「ドッバ〜 ン」とイトウが襲い掛かったとき。
驚きと興奮があり、大きな感動があった。
今それを繰り返したとしても、残念ながら、心の震えまでも再現することは出来ないと思う。
けれど、けれど・・・・・・

イトウのトップウォータープラッギングは未開の釣りだ。
トップウォーターバシングで培った僕の釣りに、イトウはどのような反応を見せてくれるのだろうか?
そこに確立された方法論はない。
なんとも幸運なことに
僕自身で、それを築いて行くことが出来るらしい。
たくさんの新鮮な驚きが、僕を待ち構えているはずだ。

かっこつけ過ぎだって?
わはははは〜、仰るとおり。
シーズンも残り僅かとなってしまいました。
また、行ってきます。


2003年10月
Kouki Yoshida


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