![]() クラブマディウォーターズ・モニターレポート ![]() Muddy Waters "Ching Dong Stick" 100mm, 33g Blank color / Salmon Slice AAA レポート:森田勝己 もし、ノイジィプラグの黄金率というものがあるとすれば、それにきっかり当てはまるのが、このチンドンスティックだと僕は思う。 それは見た目の、ボディ幅、ボディ長、それとカップ幅のそれぞれの比率なのだが、チンドンスティックはそれがぴたりとはまっていて、とても格好良く、精 悍に見える。 マスキィジッターバグ、ダルトンツイスト、ジッタースティック。ロングボディを持つノイジィプラグというと、僕がすぐに名前をあげられるのは、この3本である。 ペンシルベイト的な形のボディの先にカップを備えた形は、ジッターバグ5/8oz等のようなずんぐりしたノイジィプラグとは明らかにイメージが変わる。ボディ長とカップ幅の比率の違いが、「かわいらしさ」をスポイルし、どこか精悍さを漂わすようになるのだ。 これは、マディウォーターズのラインナップの中の「チンドンバグ」と比較するとよく分かる。ずんぐりしたチンドンバグは、ユーモラスで、フロントカップのシーソー状の機構も、どこか悪ふざけの延長のようで、楽しい。それと同じものがついているにも関わらず、チンドンスティックのそれは、魚を釣るのだという明確な意志を備えたデザインに見えてくるのが、面白い。浅い角度で取り付けられたカップは、F1マシンのウイングの様でもある。可動ギミックの構造が、なぜかストイックなものの様にも見えてくる。 張り出した石積みの足場から、振り向いて岸向きにルアーを投げた。ボディの割に小さな着水音で、チンドンスティックは着水した。背中を下に着水したようで、わずかな糸ふけを巻取る間に、ゆっくり、めんどくさそうに回転し、カップとフックを下に向けて、正位置におさまる。円形の波紋が水面に広がり、その同心円の中心でチンドンスティックはわずかに揺れていた。 岸際を捉えたわけではないが、一帯はシャロウで、何処から魚が出てもおかしくはないシチュエーション。風裏の陽の当たるシャロウ。大事に行こうという虫の知らせのようなものを、半信半疑で感じながら、僕はゆっくりとリトリーブを始めた。 チンドンスティックのカップは前方の水を自分の腹の下へと取り込み、それがローリングとウォブリングを巻き起こす。きっちりとS字を描きながらアクションする様は、ロングボディのノイジィ独特のそれで、釣れそうな雰囲気を僕に伝えてくる。カップが水を受け、カポカポと音をたてる。同時に、シーソー状の構造がカチカチとクリック音を響かせる。 いいトレイスラインだと思ったが、狙い目の枯れかけた蓮の際からは逸れていく。オカッパリなのでトレイスラインの修正は、立ち位置を変えればすむことなのだが、どうも動いては釣れない様な気がした。そこで一旦ポーズをかけ、ロッド操作でスライドさせてみる。カチンとひとつ、金属音を立て、チンドンスティックは僕の思惑通り左にスライドした。次は極弱くロッドを操作し、その場で右を向かせる。かのトップウォータージャンキー、ヴァンガードさながらの・・とまではいかないが、充分にコントローラブル。カップの抵抗で、ややぎこちなく体を揺すりながら、それでもええかげんな設計のペンシルベイトを遥かに凌ぐスライド幅。もう一度左へ強く、そして右へ弱く。左へ。 狙う枯れ蓮を捉え、そこから思い出したかのようにリトリーブを開始する。開始間もなく、コポカポコポ、と、三度目のS字アクションだったと思う。ちょうどルアーが枯れ蓮の際の真ん中を通り過ぎようかというタイミング。 チンドンスティックの真下の濁った水中が、鈍くぎらりと光った。 ズボッ! っと太い音を立て水面は炸裂し、魚体がルアーもろとも反転するのが見えた。 「出たら巻け」 僕の鈍い運動神経が、思考よりも一瞬遅れてリールを巻く動作を腕に伝える。瞬間、このタイムラグをいまいましく感じる。そして焦り、慌てながら竿を立てると、ギシ!っと竿が入り、魚の抵抗がパーミングする左手に伝わる。 幅が狭く回し難いHERITAGEのハンドルをぎこちなく回し、支えながら魚を寄せる。落ち着け、落ち着けといい聞かせながら、一旦ハンドルを離し、ラインを少し送る。HERITAGE45のハンドルがカリカリと逆転し、ラインを放出する。再びハンドルを掴み、巻取る。 ようやく大人しくなった魚の口に、親指を突っ込み、しっかりと掴んだ。親指の付け根に、久しく忘れていたバスの歯のざらざらとした感触が伝わり、安堵感と達成感が込み上げた。 褒め過ぎだと言われてしまうだろうが、ロングボディノイジィの一つの完成形が、チンドンスティックである、と言い切れるだろう。まさに言葉通り、「猿でも釣れるルアー」だと思う。 2003.10.16 H県H市K池にて 釣人:森田「猿」勝己 ![]() |