Angling Net / North Fields Report



written by kouki yoshida ........ it is inserted with the original.


2003年 11月 24日 月曜日 4:18 AM

ラストイトウ

積雪はしていないものの、辺りの風景には、そのひとつひとつに冬の影が色濃く貼り 付いて
ところによっては、川の端が凍り始めている。
あの圧倒的なまでの生命感が、今はもうない。
「トップはキツいかも・・・・・・。」
まったくやる気のない「見えイトウ」に疑惑を深めつつ、釣り上がって行く。

川が大きく曲がれば、そこにはそれだけ大きな深みが生まれることになる。
このポイントは、その深みに巨大な木が倒れこんでいて
さらにその木が、流れてくる枯れ木や枝の行く手を阻み、まるでビーバーが作るダム のような雰囲気。
本日一番の大場所。
キャストに一層の力が入る。

ラインの先のBUBBLE MUZZLEを
バックハンドでビーバーダムの裏手へと送り込む。
トントンと、やさしくロッドをあおると、ルアーはロールをしながら首を振る。
みぎ・・ひだり・・みぎ・・ひだり・・・・・・
その余韻を水に染み込ませるように、ワンアクションずつ短い間を取る。

ルアーの後方で大きく水が巻いた。
明らかに、ルアーが起こす引き波とは違う。
水面近くで反転するイトウの姿がイメージされる。
高まる緊張・・・・・・

もう一度、同じポイントへキャスト。
追うのを止め、身を翻してしまった魚になんとか口を使ってもらおうと
いくらか速いテンポでショートスライドさせ、誘いかける。

「ドゥバッ!!!」

水上に飛び出したイトウを見て、頭が真っ白になる。
ハッと我に返ったとき
僕のロッドは確かな魚の感触を得ていた。

絶対にバラさんぞ!
ロッドワークそっちのけでひたすらリールを巻く。
いくつかの障害物を越えて手元まで来たイトウに
フックががっちり刺さっているのを認めると
焦りは喜びに変わり
僕の心いっぱいに広がっていった。
「やった〜!釣った〜!」

 ‥‥‥58cm

その時、世界はまぶしく光り輝いていた。
風に揺れる熊笹が、僕に惜しみない拍手を送り
ランディングや写真撮影を手伝ってくれた仲間達が、まるで神様のように思え
アベレージサイズのそのイトウは、とても大きく見えた。

実のところこの魚にたどり着くまでには、長い話がある。
何度も悔しい思いをして、苛立ちを募らせ
そんな気持ちを抱えたまま、シーズンを終える決意もした。
けれど、とてもありがたいことに
再び僕はイトウの川を訪れ
そこで、その日最初で最後のチャンスをモノにすることが出来た(向こうアワセだけ ど)。
たった一匹の魚がどれだけ人を幸せにするのか
改めて実感することが出来た。

これからイトウ釣りは、半年以上に渡る長いオフシーズンへと入ることになる。
そのあいだにイトウ達は
厳しい冬を越え、一大イベントとなる産卵を行う。
僕は、暖房の効いた部屋で
新たな秘策を考えることにしよう。
じゃあまた来年の春に・・・・・・