Angling Net / The Grotesque Night


Chonburi近郊の湖でPlaa Chadooを狙うこと



タイへ魚を釣りに来た。勿論これが大前提である。しかし、それだけではないプラスアルファを求める気持ちもなくはない。釣りばかりしないで、のんびりしたいという気持ちもある。

ああ、旅人は贅沢だ。

だが、とりあえずは釣りだ。バンコクから東へ約二時間。チョンブリという、シャム湾に面した町の郊外にある湖へ、プラーシャドーを釣りに行く。
朝、まだ薄暗いうちから湖に浮く。2投目に早くもシャドーのバイト。しかし乗らない。雲の切れ間から太陽が顔を出すと、ジトッとした空気が湖面を覆う。暑い。

ボクが乗ったハンヤウの船頭は、Gorila-Imoという中年のボートマンだ。操船技術はC〜D級。無口。時々「auaoo」と叫んで、呼吸しに水面に上がってきたプラーシャドーの波紋を指さす。釣れないとまた邪魔くさそうにパドルを動かす。もっとシャキシャキできないのか‥‥‥否、これが平均的タイ人だ。そしてここはタイだ。それでいい、それでいい。

作戦会議をするタイ人化したリーダーと現地人ガイド(右端がGorila-Imo)

現地ガイドの表情は真剣そのものだが、リーダーの意見を理解しているかどうかは怪しい。

この湖はエンジンもエレキも使用禁止らしい。風が出始めると船頭は操船が大変だ。しかし、Gorila-Imoは漕がずにオダや草を握って船を止める。ああ、投げるところがない‥‥‥。


この日、ボクはプラーシャドーを三匹釣った。しかし、そのうちの二匹はGorila-Imoの拙いネットさばきで逃げられてしまった。一匹は60cm級のあの婚姻色に彩られた一匹だった。でも、だれも責められない。ひとせいにしてはいけない。逃げられたけれど、それでいい、それでいい。

三匹目はGorila-Imoを頼らず自力で抜きあげた。しかし、ネットの要らないほど小さなシャドーだった。決して不平を言ってはいけない。釣りは大きさでも数でもないのだ。一匹は一匹、女は女だ。釣りは最初の一匹にすべてがある。ボクはこの一匹で納得することにした。小さいけれど、それでいい、それでいい。


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