Angling Net / Topwater Bass Fishing





近江の国は「淡海国」であること
大海原のような琵琶湖に小さな小さなボートを進めると、巨大なものに飲み込まれるような錯覚に陥る。まさに淡水の海である。

当時の私の装備はというと‥‥‥

車‥‥‥‥‥‥‥スズキジムニー1300cc
船‥‥‥‥‥‥‥セルボート(FRP製、全長170cm)
エンジン‥‥‥‥ヤマハ1.8HP
電気モーター‥‥ミンコタ12LB推力
竿‥‥‥‥‥‥‥シェクスピアのグラス、樋之上のボロン
リール‥‥‥‥‥アンバサダー 4600CB, 1500C
疑似餌‥‥‥‥‥All Handmade Topwater Plugs




ボートが10万円。1.8馬力の玩具みたいなエンジンが7万円。エレキが5万円‥‥‥当時の私の稼ぎからするとけっこう贅沢な装備である。

大きな入れ物で釣りをするには小さすぎる乗り物だったが、だれと競うわけでもなく独りのんびりやるにはこれで十分だった。

本当に釣り人に出会うことはなかった。すこし寂しいぐらい誰にも会わなかった。巨大な湖を独り占めにする歓びを噛みしめていた。

西ノ湖や大中之湖に比べるとバスのサイズも格段にアップした。半日やって50cmアップが釣れなかった日は「不漁」と言っていた。
まるで金銭感覚がマヒしたにわか成金のようである。湯水のようにバスを釣った。

湖岸沿いを釣りながら、何日もかけて琵琶湖を一周した。すべてを把握するには琵琶湖は広大すぎた。しかしそれでもお気に入りの場所は何ヶ所かあった。
とくに安曇川から大浦にかけての湖西岸はトップウォータープラッギングに最適のフィールドで、その後なんども通うことになる。

やがて、南湖を中心に釣り人の姿が見られるようになった。それまでヘラブナ釣りの客を相手にしていた貸舟屋が、バス釣りにボートを貸すようになっていた。
しかしこの広大な湖に、どれだけの釣り人が入ろうともたいした影響はないだろうと思っていた。

西ノ湖(大中之湖)で、あれほど苦汁を飲まされたことなどすっかり忘れて有頂天になっていたのである。