Angling Net / Fishing Reports 雨が降ったらトップ屋がもうかる ジャンキー内藤とバスを釣る2 夜半から降り出した雨で、944の景色は墨絵のように滲んでいた。対岸には、ぼんやりとレーヨンの赤白が浮き上がっている。外気温20℃。 釣れない鳴門のメバルを早々に切り上げて、イマギレのスロープに着いたのは真夜中。いつものスロープをランドーを屋根に載せたJ内藤の車が滑り降りてくるまでには、まだたっぷりと時間があった。 私は独り車の中で楽しい釣りの予兆を楽しんでいた。 5時30分。我々を載せた12フィートは、まるで牛乳瓶の底のような944の水面を滑り出した。 ひんやりと湿っぽい空気が乾いた喉を潤す。 ■さっそくJ内藤が笑わせてくれる ドカンと出たバスを合わせた途端、J内藤のロッドからボロッと5000Dが外れて落ちた。仕方がないのでフライフィッシングのようにラインを手でたぐって寄せる‥‥‥ 「うおお!リールが外れてしもた!」 「わおお!ええバスや!手え火傷するで!」 「がはは!リールなんていらんわコレぐらいのバス」 「むむむ!けっこうでかいで‥‥‥47cm!」 ■雨の日のカバーゲームは難しい? この日は本当はドピーカンの中でカバー勝負をやる予定だった。布袋葵、菱、松藻、カナダ藻、葦、蒲‥‥‥水生植物満載の944はカバー天国。日頃打ち込めないポイントにガンガン打ち込めることは、ある種ストレスの解消になる。 しかし、雨が降ったりやんだりのそれらしくない天気。こんな日はバスはカバーから這い出しているのだろうか。 かなり苦戦を強いられたが、なんとか布袋葵のエッジで数発挨拶がある。ただしセットザフックに持ち込めたのはGhost グロウカラーの一発だけ。フロッグに載せるのは至難の業である。 「おお!やっと乗った!」‥‥‥眠気覚ましの一撃。 ■鼠でバス釣るJ内藤 J内藤はハリソンスーパーフロッグ、スーパーフロッグモドキ、ヒックリージョーなどオールド系カエルを駆使するがいずれも不発。苦戦しつつも最後にはゴムネズミで一発いいバスを引きずり出した。 ぶっといグラスで強引に引きずり出した45cm級。 殿ご満悦のご様子‥‥‥ サイズではジャンキー、バイト数ではイカザス。カバー勝負は両者痛み分けのイーブンというところか。 ■オールドプラグに魂を入れてやる ついこの間、Angling Net(温故知新)で紹介したレッドヘッドのダブルスィッシャー。フックを#2に換えて、スクリュウをチューニングして臨んだ。引退前にもう一花咲かせてやろうという魂胆である。 そして‥‥‥J内藤イチオシのOjizo-Sanポイントで見事に炸裂。マタギイカザススペシャルを極限まで曲げてくれた。 何故か目が点になっている‥‥‥ このプラグ、J内藤夫人は写真を見ただけで見事に「ニップアイディッディ!」と言い当てたらしい。サウスベンド社製らしいのでおそらくNip-I-Diddeeではないかと思っていたが、やはりそうだった。明るいところでよく見ると、背中に「‥‥‥DID‥‥‥」の文字がうっすら浮かんでいるではないか。お見事! オーナーとしての私の責務は果たしたので、このプラグは次のオーナーに譲ることにする。ミセス内藤‥‥‥よろしくたのむ。ラストオーナーとして彼女自身の手で、どうか最後の華を咲かせてやってほしい。 肩幅あるのガッシリとしたマッチョなバス ■2オンスバナナで10発以上出す 手首がどれだけ丈夫でも、一日中2オンスプラグを投げ続けることはできない。しかしJ内藤は本物のアホだった。塗装が破れ、ウエイトが飛び出して1.8オンスになってもまだ投げ続けていた。 そしてMyago-chiポイントで強烈なヒット! この瞬間だけ、J内藤の表情が一変引き締まったように思う。アホから一瞬にして漁師の顔になった。目がファイターになっていた。しかし見事にバラす。アホに戻る。 ■単純にバス釣りを楽しみたい ニッポンのバス釣りを取り巻く事情は年々悪くなっている。長い間バス釣りに関わってきた者として、大きな責任を感じている。もちろん釣り人としての良心を失ってはいけないし、決して傍観者であってはならないこともじゅうぶんわかっている。 しかし、たまには何も考えずにバス釣りを楽しみたいと思うことがある。これは正直な気持ちである。たまにはこういうことも許されたい。 前日、NBCのバストーナメントがあって100艇以上のボートがここで釣りをしたらしい。トーナメントに苦言を呈するわけではないが、バスはとてもナーバスになっていた。 それでも、本筋さえ外さなければこんなに楽しいバス釣りができるのだ。トップ屋の熱意が伝わったバスたちが、こんなに元気に水面を割ってくれるのだ。心底楽しめた日には、釣り人の顔はこんなにほころんでしまうのだ。 バス釣りは楽しい。一生続けていたいと思う。そのためにやらなければいけないことは山ほどある。避けて通ることの出来ない選択肢に悩むこともある。しかし、それもこれも、すべてこの笑顔のためだと思えば、決して茨の道ではないはずだ。 3 September 2001 Ikasas Ikuy return to topwater bassin' |