Angling Net / North Fields Report



written by kouki yoshida ........ it is inserted with the original.


Our days at the PARADISE 前編 (3/4)

1st day (2/3)

礼文島のサーフは基本的に遠浅の地形。
単調で、ポイントがしぼりにくく
魚も広範囲に散らばっている感じがする。
28gのジグをセットして探っていく。

去年も、一昨年も
ぼくはこの場所で、この方法で海アメを釣り上げた。
特に2年前は、冬の間に通いつめた挙げ句
一匹の海アメを釣り上げることしかできなかったから
礼文の易しさ(優しさ)に感動したもんだった。

そして、今年もまた救われた。
どんどんポイントを移動しながら釣るもアタリなく
それでも粘り強くキャストし続けると
遠めで「コン!」とヒットした。
0匹と1匹、
この大きな差は身に沁みて分かっている。
「どうかバレませんように。」
そう祈りながら慎重にファイトして
今年の礼文釣行最初の魚がぼくの手に収まった。

ようやくぼくの足が、地についた。

小さいながらも嬉しい。ほっとする。


夕暮れが近付いてくる。
この日ラストのポイントとして、久種湖を選ぶ。
新入生のハシモトを連れて
バンガローから少し離れたポイントまで車で行く。

ポイント付近で駐車場所に困っていると
地元のおじさんが、快くスペースを提供してくれる。

久種湖で苦労するのは
湖の岸際ほぼ全部を覆うヨシの存在。
この時期、枯れてはいるが
それでも薄いところを探して釣らなければいけない。
また、そういう場所は手前から掘れている証拠で
同時に好ポイントでもある。

しばらくキャストするもあたりがない。
人気がして後ろを振り返ると
さっきのおじさんが、長靴を履いてこちらへやってきた。
「釣れたかい?」
「いや〜、ダメですねぇ。」
お決まりのせりふで会話が始まる。

このおじさん
昔はかなり夢中になってアメマスを釣っていたらしい。
その口からは
度肝抜かれるほどの、大物の数字も飛び出した。
けど、そんな豊富な経験がありながら
押し付けがましいところがまったくなくて
「うんうん、そうでしょ。」
と、まるで仲間の話を聞くようにして
ぼくの感想にうなずいてくれる。

「この島の雰囲気もいいですよね。」
ぼくがそう言うと
「いいよね。のんびりしててね。」
と、嬉しそうだった。
感じがいい、という言葉以上に感じのいい人。

「まだ時間あるよ。釣りなさい釣りなさい。」
そうぼくらを促しておじさんは戻っていった。

これだ、と思った。これこそが礼文島だ。
日本の最北限にある島だから
5月でも気温は低く、あまけに風も強い。
けど、この島のことを思い出すとき
いつもその情景は穏やかで、温かみを持っている。
あのおじさんのような人たちが息づくこの島の開放的な空気が
ぼくにそんな印象を与えているのだ。

そうしていい気分でキャストをしていると
手前の駆け上がりの付近でアメマスがヒットした。

9.6feet、ライトアクションのシーバスロッドがグググと締めこまれる。